日本最古のお菓子は?
「日本のお菓子」と聞いて、皆様は何を思い浮かばれますか?
お饅頭、羊羹、最中、大福、どら焼き…様々だと思われます。
では、「日本最古のお菓子」は、何かご存じでしょうか?
今回は、「現存する日本最古のお菓子」についてお話しいたします。
時は1400年程前、奈良時代にまで遡(さかのぼ)ります。
当時の日本は、
中国の先進的な技術や政治制度、文化、
また仏教の経典や教えを摂取・収集することを目的に、
留学生を中国に派遣していました。
当たり前のことですが、現代と比較して、当時は造船・航海技術も未発達。
すぐれた技術や情報、仏法を、
すこしでも多く吸収して持ち帰り、
祖国を発展させようと、
選り抜きの秀才・天才(いわゆるエリート)たちが、命がけで航海に出ていったのです。
当時の中国の王朝は、唐(とう)。
もうおわかりですよね、唐へと派遣された彼らエリート留学生たちが、遣唐使です。
今回お話しする日本最古のお菓子も、この遣唐使によって日本に伝えられました。
唐から伝わってきたお菓子ということで、唐果物(からくだもの)と呼ばれたようです。
今でこそ、果物(くだもの)という言葉は、果実(fruit)のことを指しますが、
この「からくだもの」という呼称を鑑みると、
当時は果実でなくても甘いものはみな、くだものと呼ばれていたのかもしれません。
この唐果物、仏教とともにわが国に伝わってきたこともあり、
密教でのお供え物として用いられるようになったようです。
そのため、当時は一般庶民はとても口にすることはできず、
貴族のみに与えられたお菓子でありました。
この現存する日本最古のお菓子、
日本でたったひとつのお菓子屋さんでのみ作られています。
こちらがそのお菓子です。
名前は「清浄歓喜団(せいじょうかんきだん)」です。
祇園に本店がございますお菓子屋さん「亀屋清永(かめやきよなが)」様が作られています。
きんちゃく袋のような形をしていますね。
この形は、金袋を模しているそうです。
また、袋には、八つの結び目があります。
この八つの結び目は、八枚の葉を持つ蓮華をあらわしているそうです。
中に使われている具材等は、伝来当時のものとは異なるものですが、
密教のお供えとして用いられたことからでしょうか、
このお菓子の製法もまた秘法となったようでして、
この亀屋清永さんの製法は、比叡山の阿闍梨より伝えられたものであるとのことです。
さて気になるお味ですが、
この清浄歓喜団、
はじめて口したときの感想、
ひとことで言うならずばり、
「神秘」
でした。
私は、生まれてはじめてお菓子に神秘性を感じました。
この神秘性、香りによって齎されています。
清浄歓喜団は、七種もの香を用いられて作られているのです。
製法は秘法のため、
どのようなお香を、どのような分量で、どのように配合しているのか、
知りようもありません。
お菓子による神秘体験。
この清浄歓喜団、まさに「食べる密教」です。
必見、必香、かつ必食です。
一度召し上がられますことを強くお薦めいたします。
さて、この清浄歓喜団をつくられている亀屋清永様ですが、
数々の名だたる名社・名刹から御用達を受けています。
例えば、
・八坂神社
・知恩院
・延暦寺
・妙法院
・誓願寺…等。
ここでいう「御用達」の意味は、
「その神社、そのお寺の紋をつけた菓子(紋菓、もんか)を作ることが出来る(許されている)」ということです。
この御用達、
ひとつのお寺・神社につき、
ひとつの菓子司のみが受けることが出来るのです。
これほど数多くの有名なお寺・神社から選ばれているということから、
この亀屋清永様が、どれほどすぐれたお菓子屋さんであるか、推して図られますね。
実際、亀屋清永様は、
清浄歓喜団以外にも、見た目にもお味にも素晴らしいお菓子を、たくさん作られております。
京都にお越しの際は、是非お尋ねになってみてください。
(祇園の本店の他に、京都高島屋と京都伊勢丹にも出店されておられます)
(こちらは新作の桜の花びらを込めたゼリー菓子です。見た目も味も完璧でした)
ところで、ここまでのお話しだけですと、
亀屋清永様は、敷居の高いお菓子屋さんのように思われると思いますが、実は全然そうではありません。
本店に訪れた際、「ブログに書くために、店内の様子を写真に撮らせてもらっても良いですか」とお尋ねしますと、快諾いただきました。
実は、「御用達」の意味についても、その時、社長様が自らお話ししして、教えてくださったのです。
また、試食のお菓子(個包装)も、「好きなだけ召し上がって下さい」と、お薦めくださいました。
有難く頂戴しました。美味しゅうございました。
そして今回お話しした清浄歓喜団、
一緒に頂く飲み物として、亀屋清永様がイチオシされているものがございます。
どんな飲み物だと思いますか?
何と、コーヒーなのです!
実際、私も今日コーヒーと一緒に、この清浄歓喜団を頂いたのですが、
意外や意外、すごーく合うのです!
伝統と革新が美しく調和してきたまち、
祇園のスピリットを感じました。
昨年からはtwitterも始められまして、素敵なお菓子を日々発信して下さっています。
亀屋清永様、誠にありがとうございました。
☑ まなのおすすめ本
清浄歓喜団をはじめ、京都のフォトジェニックなお菓子を紹介している本です
コーヒーの楽しみ方を教えてくれる本です
京都検定の公式テキストブックです。
清浄歓喜団をはじめとした、京都の様々なお菓子を知ることが出来ます。
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