日本最古のお菓子は?

2020年5月7日

「日本のお菓子」と聞いて、皆様は何を思い浮かばれますか?

お饅頭、羊羹、最中、大福、どら焼き…様々だと思われます。

 

では、「日本最古のお菓子」は、何かご存じでしょうか?

 

今回は、「現存する日本最古のお菓子」についてお話しいたします。

 

時は1400年程前、奈良時代にまで遡(さかのぼ)ります。

当時の日本は、
中国の先進的な技術や政治制度、文化、
また仏教の経典や教えを摂取・収集することを目的に、
留学生を中国に派遣していました。

当たり前のことですが、現代と比較して、当時は造船・航海技術も未発達。

すぐれた技術や情報、仏法を、
すこしでも多く吸収して持ち帰り、
祖国を発展させようと、
選り抜きの秀才・天才(いわゆるエリート)たちが、命がけで航海に出ていったのです。

当時の中国の王朝は、唐(とう)。

もうおわかりですよね、唐へと派遣された彼らエリート留学生たちが、遣唐使です。

 

今回お話しする日本最古のお菓子も、この遣唐使によって日本に伝えられました。

唐から伝わってきたお菓子ということで、唐果物(からくだもの)と呼ばれたようです。

今でこそ、果物(くだもの)という言葉は、果実(fruit)のことを指しますが、
この「からくだもの」という呼称を鑑みると、
当時は果実でなくても甘いものはみな、くだものと呼ばれていたのかもしれません。

 

この唐果物、仏教とともにわが国に伝わってきたこともあり、
密教でのお供え物として用いられるようになったようです。

そのため、当時は一般庶民はとても口にすることはできず、
貴族のみに与えられたお菓子でありました。

この現存する日本最古のお菓子、
日本でたったひとつのお菓子屋さんでのみ作られています。

 

 

こちらがそのお菓子です。

 

 

名前は「清浄歓喜団(せいじょうかんきだん)」です。
祇園に本店がございますお菓子屋さん「亀屋清永(かめやきよなが)」様が作られています。

きんちゃく袋のような形をしていますね。
この形は、金袋を模しているそうです。
また、袋には、八つの結び目があります。
この八つの結び目は、八枚の葉を持つ蓮華をあらわしているそうです。

 

中に使われている具材等は、伝来当時のものとは異なるものですが、
密教のお供えとして用いられたことからでしょうか、
このお菓子の製法もまた秘法となったようでして、
この亀屋清永さんの製法は、比叡山の阿闍梨より伝えられたものであるとのことです。

 

さて気になるお味ですが、

この清浄歓喜団、

はじめて口したときの感想、

ひとことで言うならずばり、

 

「神秘」

 

でした。

私は、生まれてはじめてお菓子に神秘性を感じました。

 

この神秘性、香りによって齎されています。

清浄歓喜団は、七種もの香を用いられて作られているのです。

製法は秘法のため、
どのようなお香を、どのような分量で、どのように配合しているのか、
知りようもありません。

お菓子による神秘体験。

この清浄歓喜団、まさに「食べる密教」です。

 

必見、必香、かつ必食です。
一度召し上がられますことを強くお薦めいたします。

 

 

さて、この清浄歓喜団をつくられている亀屋清永様ですが、
数々の名だたる名社・名刹から御用達を受けています。

例えば、

 

 

・八坂神社
・知恩院
・延暦寺
・妙法院
・誓願寺…等。

 

ここでいう「御用達」の意味は、
「その神社、そのお寺の紋をつけた菓子(紋菓、もんか)を作ることが出来る(許されている)」ということです。

この御用達、
ひとつのお寺・神社につき、
ひとつの菓子司のみが受けることが出来るのです。

これほど数多くの有名なお寺・神社から選ばれているということから、
この亀屋清永様が、どれほどすぐれたお菓子屋さんであるか、推して図られますね。

 

実際、亀屋清永様は、
清浄歓喜団以外にも、見た目にもお味にも素晴らしいお菓子を、たくさん作られております。
京都にお越しの際は、是非お尋ねになってみてください。
(祇園の本店の他に、京都高島屋と京都伊勢丹にも出店されておられます)

 

 

(こちらは新作の桜の花びらを込めたゼリー菓子です。見た目も味も完璧でした)

 

 

 

ところで、ここまでのお話しだけですと、
亀屋清永様は、敷居の高いお菓子屋さんのように思われると思いますが、実は全然そうではありません。

 

 

本店に訪れた際、「ブログに書くために、店内の様子を写真に撮らせてもらっても良いですか」とお尋ねしますと、快諾いただきました。

 


実は、「御用達」の意味についても、その時、社長様が自らお話ししして、教えてくださったのです。

 

 

また、試食のお菓子(個包装)も、「好きなだけ召し上がって下さい」と、お薦めくださいました。

 

有難く頂戴しました。美味しゅうございました。

 

そして今回お話しした清浄歓喜団、
一緒に頂く飲み物として、亀屋清永様がイチオシされているものがございます。

どんな飲み物だと思いますか?

 

 

何と、コーヒーなのです!

 

 

実際、私も今日コーヒーと一緒に、この清浄歓喜団を頂いたのですが、
意外や意外、すごーく合うのです!

 

伝統と革新が美しく調和してきたまち、
祇園のスピリットを感じました。

 

 

昨年からはtwitterも始められまして、素敵なお菓子を日々発信して下さっています。

 

亀屋清永様、誠にありがとうございました。

 

☑ まなのおすすめ本

 

清浄歓喜団をはじめ、京都のフォトジェニックなお菓子を紹介している本です

コーヒーの楽しみ方を教えてくれる本です

京都検定の公式テキストブックです。

清浄歓喜団をはじめとした、京都の様々なお菓子を知ることが出来ます。